いなぎ駅前クリニック

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院長コラム

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COLUMNインフルエンザをもっと知ろう

マスクをしている女性

ずっと自宅内で生活している年配の方がインフルエンザにかかりました。ご家族内には発熱ばかりか何らかの症状を自覚されている人はいませんでした。では、どこからインフルエンザウイルスが来たのでしょうか?
そんな疑問を感じているところに、一つの回答が得られました。国立感染症研究所のインフルエンザの研究者が「家に持ち込まないようにしましょう」と。

インフルエンザを患っている人が、ほかの人に感染させないという予防行為においてマスクは有効な手段ですが、インフルエンザをもらわないという予防行為においてマスクは有効でない方法である、ということは日本以外の先進国では当たり前の概念です。

風上でなければ、1メートル離れていたらクシャミの飛沫はこちらに到達しない、すなわちインフルエンザウイルスが飛んでくることがないという科学的事実を理解しているからです。すなわち日本と大きく異なり、飛沫(空気)感染のリスクは低いという認識なのです。実際、冬の時期に発熱でいらしたニューヨーカーの患者さんに「ニューヨークではぁ、皆さん~ん、ムァスクゥをぉしてますかぁ?」とお聞きすると、笑いながら「マイケルジャクソンだけでえ~ス」と返されました。

さて、最近のメディアは、インフルエンザを予防しましょうっていうと真っ先に「手洗い」を言い出すようになりました。どうしてでしょう???

インフルエンザの検査を受けた方は多くいらっしゃると思います。鼻の穴にウガッ、ですよね。この検査、口の中の分泌物を採取して検査するルートもあるのですが、鼻ウガッの方が陽性率が高いので患者さんにはつらい思いをしていただくのですがのですが、鼻ウガッなのです。
つまり、インフルエンザウイルスは鼻水の方がクシャミで飛んでくる唾液より多く含まれている!ということで、インフルエンザに罹っている人の鼻水と唾液が感染源であり、特に鼻水に注意せよ、なのです。

患者さんの鼻水に注意? 鼻水が飛んでくるの? いやいや、あなたの手指にくっついているのです! 英国では、厚生省が「マスクでインフルエンザの予防ができると認識されると手洗いをしてくれなくなるから困る」とまで言っています。

手洗い

20年以上前のNHKの番組でした。ハナ風邪の局員の鼻の中に蛍光液を滴下させ、その局員が通常のデスクワークをするとオフィスはどうなるか?という実験番組でした。特殊なカメラで観察すると、無論のことながら最初は彼の鼻の穴が蛍光を発しました。彼が鼻をかむと鼻の周りばかりか彼の手指が蛍光を発しました。そして彼がオフィス内での仕事をしていくうちにオフィス内に点々と蛍光色か観察されるようになりました。光る所を他の局員が触るとその指も蛍光を発しました…こんな実験でした。私、はたと気づきました。

指が光った他の局員がその指で目をこすったり鼻をほじったりすれば、彼の眼と鼻か蛍光を発しますよね?
では、蛍光液がインフルエンザウイルスだったら?…感染成立。

インフルエンザウイルスの体内への侵入箇所はほとんどが上気道の粘膜といわれています。ウイルスが付着した指で鼻をほじる行為はウイルスを鼻の粘膜に擦り付けているのと同じです。また、目は涙腺を介して鼻腔につながっているため、目を擦るという行為は目に入ったウイルスを最終的に鼻腔粘膜に到達させてしまいます。

では、粘膜に到達したインフルエンザウイルスは粘膜の細胞に侵入して増殖し、隣の細胞に拡散するということで体内で爆発的に増殖しインフルエンザを発症するのですが、最初の細胞内に入るというところで、その時間は15分といわれています。すなわち、うがいという洗い流しを目的とした行為は15分に1回していなければ予防効果がないということで、しかも洗浄できる範囲は口の中1/3程度。家に帰ったらうがいを、なんてまったく意味がないと思いませんか?

さて、インフルエンザの症状が「38.5℃以上で、関節痛や咳などの症状が強く…」と誤解されている方が多く、軽い症状ですとインフルエンザに罹ったと思いません。しかるにインフルエンザであっても「風邪ひいた」と判断して、他の人への感染予防に努めません。

よい例がクシャミの時に手で口を押えての「咳エチケット」。確かに飛沫感染を予防しますが、その手であちこち触る、また、鼻水をかんだ後、そのままであちこち触る。蛍光液の実験結果からはこれが感染拡大の大きな原因であるということは容易に理解できますよね。ですから「予防に手を洗え」なのです。
つまり、不特定多数の人が触った場所を触っているあなたの手はインフルエンザウイルスばかりでなくいろいろな病原体が付着していると考えていたほうが安全、ということ。

さて、件の国立感染症研究所のインフルエンザ研究者の「家に持ち込まないようにしましょう」ということは、指にウイルスをつけたままで家の中に入らないようにということ。だから、外出から帰宅した家族が、家の中をあちこち触って、おじいちゃんがその場所をペタペタ触って、その手で鼻をほじってインフルエンザに罹ってしまったと想定されます。

我が家は玄関先にポンプ式の消毒用エタノールを置いてあります。家に入ったら手のひらにサッと一吹き。そして指までエタノールを擦り込みして家の中にはいります。

家族にインフルエンザがでてしまったら、その人が触るであろうドアノブ、手がさわる家具の水平面にはウイルスがいると考えて、その場所をエタノール消毒をしておいた方が、患者さんのマスク+隔離より予防効果があると思いませんか?

寝込んでいる男性

Part 2でチラリとお話ししましたが、多くの国民がインフルエンザの症状を誤って認識しています。

メディアは毎年お偉い先生をコメンテーターに迎えて番組を作ります。インフルエンザは38度以上の熱が出て、全身倦怠感が強く、関節痛、頭痛、のどが痛く、咳が出て…云々とコメントされます。でも、いつも思います。「先生方はインフルエンザの患者さんをどのくらい拝見していましたか?」と。 最前線で患者さんと対峙している私共は知っています。インフルエンザの臨床像は37℃台、37.5℃以下のことが珍しくないこと、ちょっとダルイだけのインフルエンザも少なくないことも…。

つまり、症状ではインフルエンザどうかを診断できないのです。検査でしか正しい診断が下せないのです。ですからpart 2で言ったように、インフルエンザの臨床像を誤解していますから、軽症の方は「ひょっとしたらインフルかも?」と考えませんので、鼻水拡散させてしまうのです。

人体から出たインフルエンザウイルスの寿命は、生存(注:科学的にはウイルスなので生存という表現は誤りですがあえて使います)に最も適した環境を与えて24時間と言われています。ですから軽症であってもインフルエンザの人が拡散させたインフルエンザウイルスは最大24時間生きていて、あなたの手に付着するのを待っているのです。

さて、軽症のインフルエンザは珍しくないとお話ししましたが、インフルエンザって怖い感染症でしょうか?

皆さんご存知の抗インフルエンザ薬のタミフル。開発したのはスイスのロシュという製薬メーカーですが、スイスではインフルエンザと診断された患者さんでタミフルなどの抗インフルエンザ薬の処方を希望されるのは25%らしいです。つらいけど自然に治る病気と認識されていて、わざわざ薬を使うは必要ないと考えているのでしょうか。

実際、タミフルの世界生産量の1/3を日本が消費しているという事実は、「何人亡くなった」などと、基本的に自然に治る病気に対し、メディアはいかに歪曲した情報を国民に与えているのか、ということではないでしょうか?

薬イメージ

でも罹ってしまったら、基本的に症状はつらいし、早く勉強しなきゃならないし、会社に出ないといけないし…ってコトで背に腹は代えられずやっぱり薬。

タミフルには異常行動の問題がくっついてきます。多くの方はご存知ないと思いますが、吸入薬のリレンザやイナビルでも異常行動の報告があります。ですので今シーズンは厚労省は「小児・未成年者への投与に対してタミフルや他の吸入薬を投与された場合、少なくとも2日は監視してください」と勧告しています。

では本当に薬害なのでしょうか? 実はちゃんと検討されています。インフルエンザに罹った患者さんを、抗インフルエンザ薬と投与するグループと投与しないグループの2つにわけて、異常行動の発生率を比較したという研究です。結果は、異常行動の出現率は同等でした。つまり、薬は異常行動を誘発していないということです。すなわち、異常行動はインフルエンザウイルス感染症のまれな症状、ということになります。

さて、インフルエンザ薬を使って熱が下がって元気になって、さあ、社会復帰だぁ…ですが注意点があります。復帰のタイミングですが解熱からの日数で決められていて、つまり、その日から感染性がなくなっているかのように思わざるを得ないのですが、これが落とし穴でして、日数の経過で感染性の有無を判断できないのです。

出席(出社)停止の期間

  • 学校保健法:発症日を含めず発症後5日を経過し、かつ、解熱した翌日から2日経過するまで。幼児にあたっては3日を経過するまで。
  • 一般社会人:会社からは「医者の指示(判断)に従え」にて一般的な先生は「解熱してまるまる1日(あるいは2日)を経過したらオッケー」

では、下図をご覧ください。薬剤を投与した際の解熱後のインフルエンザウイルスの残存率です。H1はソ連型、H3は香港型。オレンジがタミフル、黒がリレンザ、薄いオレンジがイナビルです。

解熱後のインフルエンザウィルス残存率のグラフ

解熱後2日目の残存率は何%でしょうか? 驚愕の残存率ですね!
逆に1週間は危険ですよ、と教えてくれます。では、どうしたら良いでしょうか?
Part5までしっかりとお読みの方はお解りになると思います。

患者さんの体内からインフルエンザウイルスが出てくる場所は口と鼻ですから、1週間はマスクで鼻水と吐息(唾液)をブロック。鼻水をかんだらその手をエタノール消毒。マスクは両方をブロックしてくれていますからマスクを触った手も消毒。簡単な予防法です。

ならば、鼻水とマスクへの接触後の消毒を十二分に徹底していれば、バリバリにインフルエンザに罹っている時期であっても理論的には他の人に感染させてしまうワケがないのであって、すなわち仕事してよい、ということです。

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